海賊王子ヒースコート(1)
そして――。
「ふっあ、ん…!」
ひた隠しにしていた想いをわからせるように、ギルバートの唇がアイリーンを求めた。
強引だが甘い口づけに「抵抗しなければ!」という思いも萎えてしまう。
そう――甘い。
無表情でぶっきらぼうで強烈に怖い印象を相手に与える彼が、これ程情熱的にキスをするなど誰が想像するだろうか。
離れていた分、たっぷり婚約者の唇を味わうと、ギルバートはようやくアイリーンを解放した。
「ハァ…ハァ……」
呼吸を乱し、艶めかしく椅子に寄り掛かるアイリーン。
上手く思考が働かないこの状況で、彼女は残酷な現実を突き付けられた。
「貴女が想う男は今、我々の手の内にあります」
「そん…なっ!ヒースさんが…!?」