海賊王子ヒースコート(1)

「彼と、クレマン海賊団の船長――ダリウス・スミスも捕らえました。彼らは本国へ着き次第、軍事裁判にかけられます」

ハッと息を呑む。

アイリーンは彼が言いたいことを悟った。


「最悪の場合、彼らは死刑です」


死刑という言葉がアイリーンの頭にこだまする。

しかし、彼女は嫌な未来を否定するように首を振った。

「死刑なんて……ありえません!ヒースさんもダリウスさんも善い方々です!海賊ですけれど、極悪人ではありません!」

強い瞳に見上げられ、ギルバートは眉を寄せた。


「………そこまでおっしゃるなら、賭けをしましょうか」

「賭け…?」


賭けとは何だろうか。

アイリーンが首を傾げると、ギルバートは薄く笑んだ。

「裁判で貴女の想い人が死刑になった場合、貴女は私と結婚する。もし、彼らが無罪放免となったら私は身を引きましょう」


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