海賊王子ヒースコート(1)
「………わかりました。いいですよ。賭けを致しましょう」
賭けに乗っても乗らなくても、ヒースコート達が処刑されればアイリーンの未来は闇だ。
ギルバートと結婚しようがしまいが、後のことはどうでも良くなるだろう。
「断っておきますが、私は全力で彼らを潰しにかかります。それでもよろしいですね?」
「はい。私もできる限りのことをさせて頂きます」
海賊を裁く場合、多くの民衆が嘆願すれば刑は軽くなる。
ならば民衆を味方につければいいのだ。
(セルディスタに着いたら、町の人々に呼びかけましょう。クレマン海賊団を助けて下さいと…!)
自分一人の嘆願では弱過ぎるだろう。
どれくらいの人が力になってくれるかわからないが、やれることはやろう。
(ヒースさん、ダリウスさん。絶対に助けてみせます…!)
アイリーンは祈るようにギュッと手を握り合わせた。