海賊王子ヒースコート(1)


 それから、話が終わりアイリーンの部屋から出て来たギルバート。

彼は軽く溜息をつくと甲板に向かった。


もうすぐ正午になる。

日は高かった。


「異常はないか」

「はっ!問題ありません」

甲板にいた部下に問い掛ける。

「奴らの船は?」

「つい先程まで追跡されていましたが、進路を変更したのか、姿を消しました」

「そうか。見張りを続けろ」

「はっ!」


姿を消したと報告されたが、十中八九取り逃がした残りのクレマン海賊団のメンバーもガルニカを目指すだろう。

自分達の船長を見捨てるほど薄情な連中ではないことくらいギルバートは知っていた。

それよりも気掛かりなことは…。


(アイリーン嬢…)


告白した想いは本当で…。

船縁に寄り掛かり、彼は愛しい婚約者との出会いを思い出した。



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