海賊王子ヒースコート(1)
あれは、二年前。
蒸し暑い夏の時期だった。
「アッツイ!!いや~、もうホント勘弁して欲しいですよね。この夏服」
この日、ギルバートは口やかましい部下のリチャード少佐と一緒にクオーツ島のメインストリートを歩いていた。
「なんで海軍の制服は夏用も長袖なのかな~?ペラペラだけどさ、肌に張り付く感覚がスッゴイ気持ち悪いんだけど」
「昔から海軍の軍服はこれだ。伝統に文句を言うな」
「え~!伝統にも良し悪しってのがっ、ぶへ!?」
「ミギャア~!!」
喋っていた少佐の顔面を目掛けて突然、猫がジャンプしてきた。
猫はリチャードの鼻を蹴って頭に飛び乗ると、そのまま勢いよく駆けて行く。
「猫か」
「は、鼻が…」
ダメージをくらった鼻を押さえるリチャード。
そんな憐れな部下を無視して歩き出そうとした時…。
「すみません!!その子を捕まえて下さい!!」