海賊王子ヒースコート(1)
「ご苦労、少佐」
「はいは~い。どうぞ」
少女はリチャードから猫を受け取ると安心したような表情を見せた。
「ありがとうございます…。ですが…」
そして、キッとギルバートの方へ向き直る。
「動物に銃を向けるなんていけません!もし当たっていたら、どうなさるおつもりだったのですか!?」
「そのようなヘマ、私はしない」
冷えた眼差しで見下ろされるも、少女は怯むことなく、拳銃を握ったギルバートの手に自身の手を重ねた。
「ご自分を過信なさってはいけません。いつか、自分自身が傷ついてしまいますよ」
その時、ギルバートは初めてアイリーンの清んだ瞳を見つめた。
(一目惚れだったのか)
今思うと、そうなのだろう。
それから上司ヴィンセントの屋敷にお邪魔して、その少女がアイリーンであると知ったのだった。