海賊王子ヒースコート(1)
「ギルおじちゃま」
幼い声が過去に思いを馳せていたギルバートを現実に引き戻す。
「ローズマリー。危ないから甲板に出るな」
自分と同じ銀髪の少女ローズマリー。
この姪っ子はヴィンセントが保護し、こちらの船まで連れてきた。
レイバンと渡り合っていたヴィンセントだったが、若獅子の捕獲には失敗したようだ。
「ギルおじちゃま、お話があるの」
「なんだ」
トコトコと近寄ってくるローズマリーを見ながら尋ねれば、とんでもない話題を提供された。
「アタシね、見ちゃったの。お姉ちゃんとカイゾクのお兄ちゃんがキスしてるとこ」
「………」
「お姉ちゃん、とってもうれしそうだったの」
「………」
「幸せそうだったの…」
何も反応しない叔父に痺れを切らしたローズマリーは、口を尖らせてギルバートに迫った。
「ねえ、お姉ちゃんはギルおじちゃまとケッコンするんだよね?ちがうの?」