海賊王子ヒースコート(1)
「………」
この質問にもギルバートは無言を貫いた。
そして、果てしなく広がる海と空の境界線を見据える。
考えることは、アイリーンの幸せ。
彼女にとって、何が一番幸せか。
自分はどうするべきなのか。
(俺は……)
賭けに乗ってきたアイリーンの強い瞳を思い出し、目を閉じる。
「おじちゃま?」
無反応のギルバートを見上げるローズマリー。
彼は小さな姪っ子の視線を無視してその場を離れた。
甲板から船内へと戻り、ポケットの中から手探りで銀の懐中時計を取り出す。
それは婚約パーティーの時、アイリーンに貰ったものだった。
(俺はっ……)
何かを誓うように懐中時計をギュッと握り締める。
彼の瞳は揺れていた。