海賊王子ヒースコート(1)
「船長も俺も、大丈夫だ。見た目は酷いが、致命傷じゃない…」
「すみません……あの時、私が出て行ったりしなければ…」
ギルバートの前に立ちはだかったことを詫びているのだろうか。
ヒースコートは静かに首を振った。
「アイリーンのせいじゃないさ。俺達の、ミスだ」
「ですが…」
納得しない彼女に意外な声がかかった。
「あんま、気にすんな…お嬢さんよ」
ダリウスだった。
「ダリウスさん…」
「誰も、テメーのせいとか思ってねぇし…。ウゼーから、メソメソすんな」
アイリーンを思っての彼なりの言葉だろう。
「はい」
理解して頷けば、背後からヴィンセントの怒鳴り声が飛んできた。
「あんたね!言葉遣いに気をつけなさいよ!?」
「お兄様…!やめて下さい!私は大丈夫ですから」