海賊王子ヒースコート(1)
苦笑して頭をかくレイバンにアイリーンも微笑んだ。
「気にしてませんから」
「そっか。ヒースコートに知られたら殺されそうだけど、あれが一番効果あるかなと思ってさ」
そして彼は茶目っ気たっぷりにウインクをした。
「今のナンパの件、ヒースコートには内緒な?」
「はいっ」
頷くアイリーンを見届けてから「よし!」と叫ぶレイバン。
「行こう!ランバートに頼まれてお嬢さんを探してたからさ。連れてってやるぜ」
――海賊船に。
周囲の耳があるので声には出さなかったが、アイリーンにはちゃんと伝わった。
広場を抜けて細い裏道を歩き出すレイバンに遅れないよう、アイリーンは小走りでついて行った。