海賊王子ヒースコート(1)
それから三十分程歩いただろうか。
二人は海岸沿いを進んで町の中心からどんどん遠ざかり、海軍の船が全く見当たらない岸辺にやって来た。
周囲に民家は少なく、軍人の姿もない。
「到着!」
ブラックエンジェル号は切り立った崖の陰に、隠れるように停泊していた。
「こんな離れたところに…」
「仕方ねぇんだよ。捕まりたくねぇからな」
苦笑いをするレイバンと共にタラップを渡り船へ。
甲板に立つと眼鏡の操舵手ランバートが待っていた。
「お待ちしていましたよ。アイリーン嬢」
ニコリと微笑むランバートに対し、挨拶もそこそこにアイリーンは本題を話し始めた。
「ランバートさん!私、ヒースさん達を助けるために裁判で嘆願をするつもりです。そしたら、ヒースさんが私に、ランバートさん達と合流しろと…!」
「わかっています。ヒースコートならそう言うと思っていました。だから貴女を探させたのです」