海賊王子ヒースコート(1)
(どうしましょう…。頼みのキャンディスさん達を合わせても四百に届かないなんて…)
もうクレマン海賊団は全員集結してしまった。
これ以上、嘆願が増える見込みはない。
絶望的な状況を目の前にして、アイリーンは胸が張り裂けそうな感覚に襲われた。
「裁判官、もうよろしいでしょう」
ギルバートの声が冷ややかに耳を打つ。
「これ以上待ったところで、無駄に時を費やすだけです」
判決を出せと促す部下にヴィンセントは大きく頷いた。
「残念だったわね。ここまでよ」
無情にも嘆願者を見回して言い放つ裁判官。
誰もが唇を噛んだ、と思いきや。
「待って下さい。まだ、来ます」
ランバートが落ち着いた声を出した。