海賊王子ヒースコート(1)
「もちろんです」
アイリーンは綺麗に微笑んだ。
その曇りない笑顔を見てヒースコートの表情が陰る。
「すまない…。もう少しだけ俺は海賊でいたいんだ。海賊をやめたら…たぶん俺は……王になるから」
「………王子様ですものね」
「ハァ……裁判の時にバレたよな…。そう、俺はセルディスタの王子。しかも長男ときてる…」
彼は自分の面倒な立場を心底嫌っているようだ。
イライラした調子で呟くと、揺れる瞳をアイリーンに向けた。
「アイリーン。俺は近い将来、必ず王になるだろう。それでも…俺を選んでくれるか?」
「……ヒースさんが王様なら、私は王妃様ですか…?」
「そう…なるな」
「王妃様なんて……私には荷が重いです」
「そう……か…」