海賊王子ヒースコート(1)




 コツコツと、靴音が響く。

アイリーンは自分の目の前までやって来た婚約者ギルバートに目を奪われた。


(く、黒…!?)


てっきり海軍の白い軍服で登場するものとばかり思っていたのだが。


(黒もすごくお似合いです)

ダークな色彩をまとう彼は輝かしい白を着るよりも引き締まって見え、二割増しにカッコイイ。


「あら、ようやく来たわね。未来の義弟(オトウト)くん」

アイリーンの傍にいた兄ヴィンセントが嫌みっぽく声をかけた。


「提督、それにミルフォード夫人、今夜はこちらのお屋敷で婚約式を開くことをお許し下さり、真にありがとうございます」


兄の嫌みに負けず、ギルバートは畏まって挨拶をした。


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