海賊王子ヒースコート(1)
段々と近づいてくる嵐に、大広間にいる誰もがいまだ気づかずにいた。
「アイリーン嬢、手を」
普段と変わらぬ、ぶっきらぼうなギルバートの声。
アイリーンは緊張と恥じらいの中、左手を差し出した。
ギルバートは大切に内ポケットにしまっていた婚約指輪を取り出し、ゆっくりと彼女の薬指に通す。
「これが私からの婚約の証しです」
ピッタリと自分の指に収まった贈り物を見て、アイリーンはあることに気がついた。
「まあ!これは、クオーツ島の…!」
指輪の中央にはめ込まれている宝石。
白く透き通った輝きを放つその石はクオーツ島の名産品だ。