海賊王子ヒースコート(1)
「他のどんな宝石よりも故郷のものが好きだと聞いて、この石にしたのですが…」
自分の好みをちゃんと知った上での贈り物。
「ありがとうございます!とても嬉しい…!大切にします」
緊張で張り詰めていたアイリーンの表情が、一瞬にして柔らかい笑顔に変わった。
そんな彼女から、ギルバートはそっと視線をそらす。
続いて、アイリーンが隠し持っていた贈り物を差し出した。
「私からは…これを」
それは銀の懐中時計だった。
「これからの時間を、二人で歩めますように…」
彼女の未来への願いがこもった最上級の愛の証し。
「ありがとうございます」
普段、絶対に無表情を貫き通すギルバートが、わずかに微笑んだ。
(なっ…!)
それを見てしまったアイリーンは思わぬ不意打ちに頬を真っ赤に染める。