海賊王子ヒースコート(1)



 それは、ちょうどアイリーンが婚約者を心配して喧騒の中に一歩踏み出した時だった。


客として集まっていた海軍の面々と海賊達が乱闘を繰り広げる中、自分の方へ向かって駆けてくる人物。


絵物語の王子様のごとき容貌に、正義の象徴であるかのような純白をまとう金髪の青年。


「あ…!」


目が合った。


ふと、思い出す。



――アイリーンが大きくなったら迎えにくるから



あの、思い出の中の金髪の男の子。


「アイリーン!!」


視線が交わったまま、青年が叫んだ。

そして、駆け寄りながら手を差し延べてくる。


アイリーンは反射的にその青年の手をとっていた。


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