海賊王子ヒースコート(1)
ある意味、しめた!と喜びたかった。
船長の命令に背く理由ができたことに心中、安堵していたら…。
「うらあぁ!!!!」
「なっ!?うわっと!!」
レイバンが服の下に潜ませていたナイフを投げた。
それはヒュッと音を立て、リチャードの拳銃に命中。
反動で武器を取り落とす眼鏡の少佐を無視して、レイバンが叫ぶ。
「こっちだ!!」
彼は窓際まで行き、一番近くにあった窓を叩き割る勢いで開け放った。
ヒースコートは半ば放心状態のアイリーンを抱き上げると、その窓から逃走。
すぐレイバンもそれに続こうとしたが、一瞬足を止めてしまった。
「あなたは…レイバン!?」
鈴の音のような愛らしい声が後方から聞こえた。
エヴァンジェリナだ。