海賊王子ヒースコート(1)
「騒がしくなりそうだね」
穏やかな声がキャンディスの後ろから降ってきた。
「エリオット…」
声だけでもわかる。
これ程優しい響きを持つ声質の人間は、このクレマン海賊団で彼しかいない。
「ロディが血相変えて来るから、重傷な怪我人がいるのかと思っちゃったよ」
「その方がマシだったかもね」
「無事に帰ってきたのならそれが一番、だよ」
必死で駆けてくる仲間を眺めながら微笑むエリオット。
ダリウスはすでに船が停泊している所まで到着していた。
「さすがダリウス!足速いわね~」
「体力あって羨ましいよ」
感心しつつ甲板に上がってくる船長を見守る二人。