海賊王子ヒースコート(1)
「全く…泣き虫なレディーだな」
肩を上下に震わせて泣くアイリーンの頭を撫でながら、ヒースコートが呟いた。
非難するようなセリフだが、とても柔らかい響きで囁かれたそれに、アイリーンはしゃくりあげながら返事をする。
「だ…て、こわ…っか、た」
「すまない。もっと早く引き返せば良かった」
あの時、部屋を出てから、アイリーンのため飲み物でも貰おうかと調理場へ向かったヒースコート。
途中ですれ違った下っ端にニヤニヤと見つめられ、「やけに見られるな」と思いつつ階段を上がっていたが、ふと気がついたのだ。
「マズイ!」と。
(奴らの瞳は狂気を孕んでいた。欲情したハイエナ同然だった…)
未だ泣き止まぬアイリーンを見つめ、やっぱりあいつら殺しとくべきだったかな?と心で思う。