海賊王子ヒースコート(1)
それから、着替えを済ませ、大人しくベッドに潜り込んだアイリーン。
ヒースコートはそれを見届けると、部屋の唯一の明かりであるランプを消した。
そして――。
「もう少し詰めて…」
当然の如くベッドに入ってくるヒースコートに、アイリーンは声を上げた。
「え!?な、なぜですか!?先程は、何もしないと…!!」
「ああ、しないしない。でも、俺も寝るから。ここで」
受け入れたくない現状に、アイリーンが口をパクパクさせて声にならない不平を述べる。
しかしヒースコートはそれを無視して、軽く彼女の髪に口づけた。
「おやすみ、アイリーン」
それだけ言うと結んでいた自分の髪を解き、狭いベッドの中、反対の方を向き寝息をたて始める。
すぐに眠りについたヒースコートに、彼女は半ば呆れた視線を送った。