荒れ球リリーバー
《須永・青枝 調理実習》と言う文字に、今日は須永先生の調理補助をする予定だった事を思い出した。

「こちらこそ、お願いします」

慌てて須永先生に頭を下げた後、二人で肩を並べてまだ誰もいない調理実習室へ入った。

ピシャンッと扉が閉まる。

あの一件は、須永先生の気紛れ。

そう思い込んでた私は、油断してたんだと思う。

彼はこちらを見て、突然私の頬に触れて来た。

「須永先生?」

前触れの無いその行動に、固まる私。

「ゆうべ、泣いた?」

「え?」

「瞼が、少し腫れてる」

普段より少し濃いアイメイクで誤魔化した筈なのに、須永先生にはお見通しらしい。

でもイエスは言えないから、私は返答に困って黙り込んだ。
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