荒れ球リリーバー
「青枝先生は、何飲む?」

慣れないお酒は飲む物じゃない。

先日学んだ教訓を元に、私はノンアルコールカクテルをオーダーした。

お互い飲み物が届き、軽食を口に運びながら他愛のない話をする。

しばらくして、須永先生は突然訊いてきた。

「青枝先生と高岡って、どうして付き合ってるの?」

本当に、彼の言葉は誠一郎の投球並に直球だ。

「セイは、幼馴染なんです…」

私は、静かに話した。

中学生の時、告白して来たのはセイからだった。

「それから、ずっと付き合ってるんだ?」

「はい…」と答えた後、私は自嘲気味に小さく笑みを浮かべて付け足した。

「でも、もう終わっちゃいましたけどね…」

須永先生は、一瞬切ない顔を見せた。

だけど、次の瞬間には明るい笑顔を見せて言った。

「青枝先生。嫌な事は、飲んで忘れよう」

彼は、店員を呼び止めアルコールを二人分注文した。
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