荒れ球リリーバー
「でも、あいつ約束忘れてたよね…」

『約束って…、なんだっけ?』

あの一言。めちゃくちゃムカついた。

五歳のセイを自然と思い出す。

『ぼく、おおきくなったら、ぜったいプロやきゅうせんしゅになるんだ。それでね、しのちゃんとケッコンするんだ!』

「覚えてろっつーの…」と呟いた時だった。

ポタッ

「え?」

ボールの上に、突然落ちて来た水滴。

これは、涙?私、泣いてるの?

「やだっ…止まってよっ…」

私、今忙しいの。

部屋の掃除したい。

セイの思い出捨てたい。

セイの事忘れたい。

そんな私の都合なんてお構い無しに、涙は次々と溢れて来る。
< 113 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop