荒れ球リリーバー
楽し気に話し掛けて来る須永先生。

一方、笑顔を作り相槌を打つけど、頭の中は告白を断る事でいっぱいの私。

あっと言う間に校舎前に到着すると、須永先生の手がようやく離れた事にホッとするけど、同時に断るチャンスを逃した臆病な自分を心底恨む。

「あの…須永先生…」

「うん?」と首を傾げて、彼はこちらを見る。

「仕事終わったら、会えますか?」

校内では話せないから、校外で話す事に決めた。

「会えるよ。どこ行く?」と笑顔で了承してくれた須永先生。

「静かなお店が良いんです」

落ち着いて話せる場所が良いけど、私の行き付けは賑やかな場所が多い。

「須永先生にお任せして、良いですか?」

「了解。考えとくよ」

「ありがとうございます」

快諾してくれた彼の笑顔に、私の良心がチクリと鈍い音を立てて痛んだ気がした。
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