荒れ球リリーバー
『乾杯!』と言う明るい音頭の声。
カツーンッとぶつかり合い響くジョッキの音。
横を見れば生ビールを飲む須永先生。
ここは、大衆居酒屋。
静かとは言えない賑やかな場所。
「ごめん。目星付けた店に断られた」
苦笑い顔で謝る須永先生を横目に、帰り道で話す事にしようと私は決めた。
「いえ。大丈夫ですよ」と笑顔を作り、須永先生に返す。
絶対はっきり断る!だから今日こそ飲まない!
そう決めたのに、須永先生に例の上司命令と言う奴をされ、結局今日もアルコール摂取する私。
「須永先生ぇ…もう無理ですぅ…」と情けない声を上げ、今日もたった一杯のお酒ですっかり出来上がってしまった。
目の前に置かれた空になったグラスが、心の底から恨めしい。
「じゃあ、帰ろうか?」
真っ赤な顔で彼を見上げると、お酒に強い須永先生は爽やかな笑顔で店員を呼び会計を済ませた。