荒れ球リリーバー
「セイと一緒にいるの…疲れたよ…辛いよ…」

でも、それ以上に隣に並んでいたい。

お願い。誠一郎。私の本音。気が付いて。

『素直じゃねぇなぁ』って笑って抱きしめて。

薄暗い中。セイはこちらへ歩みを進め出した。

すると、同時に突然隣へグイッと強引に肩を抱き寄せられた。

「あんたに志乃は渡さない」

肩に感じる熱。鼓膜に届く声。

どちらも私の望む物じゃない。

「須永…先生…」

それは、隣に立つ同僚の物だった。

「確か職場の…」

足を止めて呟いた誠一郎は、どうやら以前須永先生がドームに来た事を思い出したらしい。

須永先生はセイを一睨みした後、大丈夫?と私の顔を覗き込んで、頬に触れて来た。

ふと須永先生の指先が濡れてる事に気付き、私は自分の頬を触ると、冷たい物が伝う感触。

私は、涙を流していた。
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