荒れ球リリーバー



ねぇ。誠一郎。どうして、あんな顔していたの?

私の中に占拠してずっと悩ませる一度生じた疑問のお陰で今日は寝不足気味だ。

「青枝先生」

重い瞼を無理矢理開け、職員室で授業の準備をしてると、須永先生が声を掛けて来た。

「昨日、大丈夫だった?」

彼の言葉に、泣き出した自分を思い出し恥ずかしさと気まずさを感じる。

「大丈夫ですよ」と小さな声で返事した。

私の返答を聞いた須永先生は、言いづらそうに話し続ける。

「あと、ごめん」

「え?」

突然の謝罪に、戸惑いを見せる私。

「俺、余計な事したかな」

多分、須永先生はあの台詞の事を話してる。

『あんたに志乃は渡さない』

「そんな事ありませんよ」

正直驚いたけど、平気な顔して答えた。
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