荒れ球リリーバー
約束を交わした須永先生が実習室へ去った直後。

「志乃さん!ちょっと良いですか!」

突然聞こえる威圧感に満ちた声に視線を向けると、華子ちゃんが仁王立ちしていた。

返事をする間もなく、彼女に腕を引かれて連れ出された人気のない廊下。

「華子ちゃん。どうして、いるの?」と今週一杯出張の筈だった華子ちゃんに尋ねた。

「早めに用事が済んで、帰って来たんです」

私の疑問に答える後輩は、すこぶる機嫌が悪そうだ。

「あれ!なんですか!」と睨みを効かせて放たれた質問。

華子ちゃんの言いたい事を本当はちゃんと理解してるけど、あれ?と惚ける私に彼女は詰め寄った。

「須永先生の事です!」

凄い剣幕で言われたのは、予想通りほんの少し前まで一緒にいた人物の名前。

「朝からいちゃついて、どういうつもりですか!?」

彼女の勢いに圧倒されそうになりながらも、私は平然と答えた。
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