荒れ球リリーバー



お洒落な店を知らない私が須永先生とやって来た場所は、熱狂的野球ファンの主人が営む都内の居酒屋。

私と華子ちゃんの行き付けであり、誠一郎にユリのエッセイ本を渡された場所だ。

ガラッと戸を引き店に入ると、「いらっしゃい」と掛け声が聞こえ店主と目が合った。

誠一郎でもない。華子ちゃんでもない。見覚えのない男性と入店した私を見て、おじさんは少し驚いた顔をしていた。

案内された誠一郎とも座った事のあるテーブル席に少し戸惑うけど、今日は週末の金曜日と言う事もあり他に空いてる席もないからそこに大人しく座りざる得なかった。

「ここが、青枝先生オススメの店か」と言って須永先生は笑顔で店内を見渡す。

「私と華子ちゃんの行き付けなんです」

「店のおじさんは、野球ファン?」と壁一面に飾られたサイン色紙を見てされた質問。

誠一郎の色紙も勿論あるけど、素知らぬ顔して私は頷いた。
< 127 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop