荒れ球リリーバー
野球好きが集まる週末の混雑した空間内は、聞くつもりは無くても客達の一喜一憂する声が試合の状況を伝えて来る。
それでも私は24インチの液晶画面から視線を逸らし、須永先生と談笑する事に努めていた。
ただ今日の須永先生は、どこかおかしい。
「須永先生。大丈夫ですか?」
目の前に置かれた沢山のジョッキ達。
普段は無茶な飲み方をせず酔っ払うことも滅多にないのに、今目の前に座る須永先生は明らかにいつもよりアルコール摂取のピッチが早かった。
「大丈夫だよ」と笑う彼の頬は、ほんのり紅く色付いている。
「今日は、もう御開きにしましょうか」
イレギュラーな出来事に不安になった私は、伝票を手に取り席を立ち上がろうとした。
パシッ
けれども、突然私の伝票を持つ手を掴むその右手。
「須永先生?」
不思議に思った私は、ほんの少し眉根を寄せて須永先生を見る。