荒れ球リリーバー
胸に過る一抹の不安が的中したのは、1対0のまま迎えた6回の表の事だった。

疲れの見え出した誠一郎は、ボール先行になりながらも何とか一つアウトを取る。

だけど次の打者に投げた直球は、普段の球威は無く高めに浮いた。

対戦チームの先頭打者は失投を逃さず、バットの芯で球を捕らえた。

『打球は延びて延びて、フェンス直撃!!
バッターは、二塁を回り三塁へ走る!!
スリーベースヒット!!』

興奮気味なアナウンサーの実況する声。

ガッツポーズする対戦球団の選手と悔しげな顔する誠一郎。

一死三塁。犠打でも一点入る本日最大のピンチ。

私は胸の前で両手を組み、セイが6回を無失点で抑える事を祈る。

「あっ」と思わず漏れた声。

疲労感から腕を引き上げる事が出来ずに、手元が狂って思わぬ所に飛んで行ったすっぽ抜けた変化球。

右バッターボックスに立つ打者の左肘に当たった。デッドボールだ。

球場内に響く誠一郎に対する罵声。
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