荒れ球リリーバー
死球を当てた選手に謝罪する為、誠一郎は帽子を取り一礼した。

一死一三塁になる。

『ここで、監督自らマウンドに向かいました』

アナウンサーの実況通り、セイの元へ集まる内野陣と監督が画面に映った。

『6回表。
球数も多いですし、降板でしょうか?』

『チームの中継ぎ事情を考慮すると、この回まで高岡に投げて欲しい筈です。続投確認でしょうね』

耳に入る実況者と解説者のやり取り。

マウンド上で会話する誠一郎と監督。

《まだ行けます》と誠一郎の唇が動き、野手も交え話した後に監督は立ち去った。

『高岡誠一郎。監督に鼓舞され続投です』

監督の声掛け効果は、絶大だ。

腕の引き上げ。投球フォーム。
全てが別人のように改善されている。

でも、疲労を隠し切れず弱冠甘く入ったスライダーを打者が打ち返す。

一二塁間へ飛ぶ鋭い打球。

失点の恐怖から、私は目を瞑った。
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