荒れ球リリーバー
「絶対勝って!」

あの日のように、勝利を掴んで。

「約束守ってよね!」

まだ叶えていない約束があるでしょ?

想いを全て伝え終えると気付く周囲の人々の
集中する視線。

恥ずかしさを覚えて、私は慌てて椅子に座り直し俯いた。

「羨ましいな」と不意に聞こえた声に顔を上げれば、須永先生が寂しげな笑みを浮かべる。

言葉の意味が解らず首を傾げる私に彼は言った。

「必死に応援される高岡が羨ましい」

改めて恥ずかしくなり再び俯きそうになるが、須永先生の一言で動きを止めた。

「青枝先生のお陰かな?高岡、良い眼してる」

液晶画面に視線を向ける。

強気な瞳と震えの治まった左手指先で白球を握り締める誠一郎が、映し出された。

誠一郎に見惚れてると、振り上げられる左腕。

奴の愛称に相応しい荒々しい力強い直球の走る光景が、私の瞳に映り込む。
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