荒れ球リリーバー
いつかセイが言っていた。
『良い投球は良い攻撃を生む』
『ピンチの後にはチャンス有り』
本日最大の危機を乗り越えた誠一郎のピッチングは、間違いなく良い投球だったと思う。
そして、ピンチを切り抜けた後のグランドは、まさに今チャンスと言う場面に遭遇している。
六回裏の攻撃は、斬り込み隊長である一番打者から始まる好打順。
若干疲れの見え出した対戦投手の投げた内角低めのボールを、内角打ちの天才と称される一番打者が三遊間へ見事捌いた。
無死一塁。セオリー通り一塁方向に球を転がし送りバントを卒なく成功させる二番打者。
一死二塁になり、三番打者は140㎞の直球を打つが内野ゴロに倒れた。
二塁走者は、この間に三塁ベースに到達。
歓喜の声と溜め息が交錯する店内。
二死三塁になった球場。
誠一郎の女房役である捕手が、左打席に立つ。
居酒屋の客達は、頼れる四番打者に願いを託し画面越しに真剣な瞳で見守った。