荒れ球リリーバー
ツーボールツーストライクに追い込まれた時、それは起こった。

フルスイングしたバットに白球が当たった瞬間
、ボールは高く遠くに飛んで行く。

『打球は大きな大きな放物線を描いて』

球場内も。居酒屋内も。

大きな弧を描く飛球を、誰もが眼で追った。

『入った!!バックスクリーン!!
今季二十号は、大きな追加点!
ピンチを凌いだ高岡を援護するツーランホームランだ!!』

四番の一振りが中堅後方に吸い込まれた事を認識すると、球場も店内もお祭り騒ぎの歓喜する声に満ち溢れる。

喜びを噛み締めダイヤモンドを低速で走る四番打者と笑顔で出迎えるチームメイト達。

その中に、勿論アイシングを施した誠一郎の姿。

セイ。私ね、思うんだ。

このチャンスは。この追加点は。

セイの投球が切っ掛けなんだよ。
セイが生んだ攻撃なんだよ。

白い歯の覗く満面の笑みを浮かべる誠一郎を
見ていると、改めて実感せざる得ない。


私、やっぱりセイが大好きだよ。

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