荒れ球リリーバー
「志乃さんって、ほんと高岡さん大好きですよね~」

「そんな事ないし」

にやける私を見て茶化す華子ちゃんの言葉を突っぱねる。

けれど、視線はマウンドで投球練習をする誠一郎に釘付けだ。

投球練習を終えて、遂に打者に挑む直前。

誠一郎は、帽子を取った。

帽子のツバには、今季の抱負が書いてある。

ツバを見つめて目を閉じ、何かを呟き大きく深呼吸。

この動作は、誠一郎の登板直前のルーティーンとなっている。

目を伏せた横顔も。帽子を握る指先も。

何もかもが、格好いい。

セイの全てが、私をドキドキさせる。

打者がバッターボックスに立って、誠一郎は静かに目を開いた。

そして、遂に投球開始。
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