荒れ球リリーバー
誠一郎の持ち味は、自分自身でも何処に行くのか分からない高速の荒れ球だ。

キャッチャーのサインに首を縦に振って左手から投げ込まれる第一球は、キャッチャーの構えた位置とは違う所に行き、それでも何とか捕球される。

同時にバッターボックスに立つ打者のバットは空を切った。

155㎞のストレート。

スピードガンに表示された数字に、スタンドが沸く。

今日も荒れ球リリーバーは健在だ。



セイの一球一球に反応する女の子達の声援。

好きな男のユニフォームも着れない私は、当然表立って声援も送れない。

そんな素直じゃない意地っ張りな私は、胸の前で両手を組んで祈るようにセイを見つめる。

これが、私の精一杯の応援。

頑張ってって、心の中で叫ぶの。
< 36 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop