荒れ球リリーバー
「高岡さん。カッコイイですね」

「そう?」と華子ちゃんの言葉に素っ気なく答えた。

ウソ。

本当は、めちゃくちゃ格好いい。

登板中と登板後の表情のギャップに、キュンとする。

セイのファンも思う所は同じらしく。

「あのギャップが堪んないよね~」と話す黄色い声が、聞こえる。

「可愛い…羨ましい…」

「志乃さんだって、年の割りには可愛いですよ


ファンの子達を見て呟いた私の言葉に、華子ちゃんは微妙なフォローをしてくれる。

あの子達みたいに、私も堂々と人前でセイの好きな所を言えたら良いのに。

もしも、私が素直で可愛いげのある女だったら、セイは浮気しないのかな。

そんな漠然とした事を考えながら、先程までセイが立っていたマウンドを、私は一人見つめていた。
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