荒れ球リリーバー
返答に困る私に、誠一郎は拗ねたような声で話し出した。

「俺のユニ着たら、もっと嬉しいけど」

セイのユニフォーム、実は持ってるし、球場にも毎回持って行く。

けど、素直じゃない意地っ張りな私は、着る事が出来ない。

「別にいいでしょ」

代わりに球場で無料配布されるユニフォームを着る私は、セイに素っ気なく返答する。

すると、突然聞こえた一つの声。

「高岡さん。お待たせしました」

受話器越しに聞こえるのは、明らかに女性の声だった。

「セイ?今、どこにいるの?」と問い掛ける。

「え?」

いきなり質問されて、狼狽える誠一郎。

怪し過ぎる。

「俺、もう切るわ。おやすみ」

街灯の下。

早口で素早く通話を終了させられた。

ツーツーと電子音の鳴るスマホを見て、私はどうしようもない不安と胸騒ぎを覚えた。
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