荒れ球リリーバー
ここは、職場だ。

一社会人として、同僚に心配を掛けてはいけない。

「ありがとうございます。何でもありませんから」と言おうとした私。

「あっ。どうせ女癖の悪い彼氏にまた浮気されただけなんで、気にしないで下さい」

けれども、華子ちゃんが代わりに答えてしまった。

あんた、何ペラペラ喋ってんのよ!?

プライバシーって言葉、知らないの!?

本当は文句をを言ってやりたいけど、須永先生の手前言えずに苛立つ。

そんな私に、須永先生は幸いにも気付かない。

「青枝先生、彼氏いらしたんですね」

ただそう言った彼の声は、心なしか普段より若干低かった気がする。

「須永先生?」と私は不思議に思って、小首を傾げ彼を見た。

「授業の準備、行って来ます」

ほんの少し慌てたように、須永先生はその場を去って行った。
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