荒れ球リリーバー
五回表終了。一対五。誠一郎のチームは、負けている。

リードや接戦の場面中心に登板する誠一郎は、このままだと今日の出番はないと思う。

今の私は、セイを目前にして平然としてられる自信がない。

チームメイトとファンには悪いけど、好都合な展開だ。

だけど、世の中上手く行かない。

「うそっ…」と思わず漏れる悲壮感たっぷりな声。

五回裏。二死満塁。

四番打者の打球は、大きな弧を描いてライトスタンドに飛び込む。

五対五と同点になり、沸き上がる歓声の中唖然とする私。

接戦になってしまった。

均衡を崩さず、五対五で迎えた七回表。

いつものようにアナウンスと声援に包まれて、ベンチ裏から現れた誠一郎を直視出来ずにいる。

「あれ?こっち見てる?」

すると、突然聞こえた須永先生の呟きに反射的に須永先生の視線を追う。
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