荒れ球リリーバー
奴の色気に動悸が鎮まらない私は、抱き締める腕の力が弱くなった事にすら気付かなかった。

「志乃?」

誠一郎は不思議そうな表情で、私の顔を覗き込んだ。

普段遥か高みにある端整な顔が突然近付き、動悸は更に加速する。

そんな自分を隠す為、私は声を張り上げた。

「こっ、こんな所に連れ込んで、いきなり何なの!?」

すると、私の顔を覗き込んだまま不機嫌そうにセイは言った。

「あの男。誰?」

「ヘ?」

思わぬ事を聞かれ、間抜けな声が出る。

「一緒にいた男。誰?」

恐らく須永先生の事を言ってる誠一郎は、眉間に皺を寄せ更に問い詰める。

「職場の人だよ」

告白らしき事をされたけど、間違った事は言ってない。
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