荒れ球リリーバー
誠一郎とユリのスキャンダルへの報道も随分落ち着いた五月のとある夕方。
「飯作って」とセイからの要請が来た。
連休の影響で連日試合続き。
その上、半分は地方での遠征。
誠一郎と顔を合わせるのは、かなり久し振りだ。
セイに会える事が、嬉しくて楽しみ。
マンションへ行く足取りも自然と軽くなる。
到着すると、合鍵でドアを開けた。
主のまだ帰宅してない室内は、窓もカーテンも閉め切られ灯りも点いてない。
灯りを点け窓を開けて、長らく主の不在だった室内の空気を入れ替える。
換気をしながら、他の女が部屋に入った形跡がないか確認してしまう。
無意識の内に部屋の隅々まで目視する私は、我ながら女々し過ぎて怖いし引く。
キッチン以外の部屋を見た後、他の女の跡が見当たらない事に取り合えずホッと胸を撫で下ろした。