荒れ球リリーバー
キッチンに足を踏み入れる直前。

脳裏に過る。

『俺、志乃以外の女の料理食いたくない』

誠一郎の時々口にする言葉。

私が信じて止まない言葉。

リビングや寝室に他の女が入るのは、勿論嫌。

キッチンに入るのは、もっと嫌。

誠一郎に料理を作るのは。

このキッチンに立てるのは。

私だけの特権。

だから、キッチンは他の部屋より念入りに目を走らせる。

キッチンにも異常がない事を確認した後。

「病んでる…」と痛々しい自分の行動に、思わず苦笑いした。



一汁三菜の食事を用意する。

いんげん豆、人参のグラッセ、じゃがいもを添え、オニオンソースを掛けたハンバーグ。

水菜と大根を加えた海藻サラダ。

キノコとツナのオムレツ。

野菜スープ。御飯。苺。
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