荒れ球リリーバー
ダイニングテーブルに向かって配膳している時だった。

「すっげぇ美味そう」

耳元で囁く低い声。

背後からギュッと抱き締められた。

帰宅したばかりの部屋の主は、私をクルリと回転させ今度は正面から抱き締めて来た。

「ただいま」

新婚夫婦のような甘い空気に、何年経っても慣れない私の鼓動は高鳴る。

「おかえり」

オズオズと誠一郎の大きな背中に腕を回し、小さな声で応答した。

素直じゃない私の精一杯の行動に、セイは嬉しそうに笑みを浮かべた。



「美味しい?」

左手に箸を取りハンバーグを口に運ぶ誠一郎に、私は食べ始める事もせず熱い視線を送り訊ねた。

「めちゃくちゃ美味い」

満面の笑顔に、こちらも自然と口元が緩む。

この笑顔を見る事も誰にも譲れない私の特権だ。
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