荒れ球リリーバー
「機嫌直しなさいよ」

嬉しい気持ちを隠して呟いた私の一言に、セイは甘えた口調で言った。

「饅頭食わせて」

「は?」

「機嫌、直して欲しいんだろ?」

セイは、目の前でアーンッと大きな口を開いた。

調子に乗っているこの男を殴り飛ばしたい気もする。

でも素直で可愛げのある自分になりたい気もする。

「サインのお礼に特別にしてあげる」

そう言い訳をして、饅頭を手に取りセイの口へ運んだ。

「ホントだ。モチッとしてるな」

誠一郎は、満足げな顔して食べている。

その後も次々に出てくる土産物達。

「ねぇ。どんだけ、買ったのよ?」

広島。名古屋。兵庫。

様々な遠征先で購入した土産物が、目の前にずらりと並ぶ。

「久しぶりに志乃に会えるのが楽しみで、買い過ぎた」

セイは、少し顔を赤くして恥ずかしそうに言った。
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