荒れ球リリーバー
「このままじゃ、爆睡しそうですよ」

欠伸の出る口を手で隠し、華子ちゃんは呟いた。

瞬く間に六回の裏まで終了。

7回表。

ビジターチームのラッキーセブン。

誠一郎のチームは、勝利する為に先手を打った。

それまで好投し続けた先発投手を降板させる。

まだ投球する余力充分での交替に、驚きざわめく場内。

《7回を投げ勝て!》と言うスクリーンの文字と共にコールされたのは、勿論あの男。

「ピッチャー。高岡。背番号63」

私が世界で一番想って止まない男は、今日もベンチから飛び出しマウンドを目指し走って行く。

「あっ。高岡さんだ。今日も見た目は、イケメンですね~」

誠一郎の登場により、眠気が吹っ飛んだらしい華子ちゃん。

「見た目だけじゃないわよ…」

華子ちゃんの失礼な発言に、極力小さな声で反論した。
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