荒れ球リリーバー

『ヒミツ』と言って照れ笑いした顔が、脳裏を過る。

「ヒミツ」

いつかの高身長男と同じ答えを返した。



ピッチングの際、手からボールを離す位置の事をリリースポイントと言う。

誠一郎は、球種を見破られないようにする為、リリースポイントを一定に保つ事を重視してる。

球威抜群のストレート。

低めに切れ込むスライダー。

大きく曲がるスローカーブ。

異なる球種を投げる誠一郎の左腕の振りは、常に一定だ。

先頭打者を空振り三振に見事抑える。

今日は、調子良さそうと心の中で、密かに一人安堵する私。

その後も誠一郎は、打者二人をテンポ良く抑えて、無事七回表のマウンドを投げ切った。

セイの投球を安心して見れた事は、珍しい。

それは、華子ちゃんも同じみたい。