荒れ球リリーバー
華やかな笑顔を浮かべてた彼女は、私を見た途端、険しい顔付きになった。

「あなた、誰?」

テレビで聞く明るい声ではなく、冷たくて敵意剥き出しの声で問い掛けて来る。

反射的に俯くと、彼女の手元が視界に入った。

置かれてるのは、私愛用の包丁と切りかけの野菜。

『俺、志乃以外の女の料理食いたくない』

信じて止まない言葉が、頭に響き渡る。

「……志乃?」

唖然として立ち尽くす私の背後から、声が聞こえた。

ゆっくり廊下を振り返ると、会いたかった筈の男が立っていた。

ジーンズ一枚を身に纏った半裸姿の誠一郎は、私以上に唖然としている。

突然、セイはハッと何か気付いたような顔をし
てキッチンへ駆け込んだ。

「何やってんだよっっ!!?」

普段温厚な誠一郎からは、想像も出来ない怒声が飛んだ。
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